2009年5月14日木曜日

番外 咲-Saki- OP EDの映像処理


局:テレビ東京
放送日:2009/05/10
評価:SD-ip/486


相変わらず四角分布のくっきりアプコン。

場所によってはジャギ感も少なくHVっぽくみえるところもあるけれど、全体に横方向にはっきりSDジャギが出てしまっていて、ギザギザアニメになってしまっている。逆にいえばSD解像度にするのが無茶なくらい精細な絵を縮小した結果であって、元の絵の解像度は普通にHVで通用する精細さを持っている可能性が高いといえる。といってHVマスタの存在を確実視できるようなところは見つけていない。

横方向にはSD相当のジャギが強いものの、縦方向には比較的高解像度の特徴が残っていて、720を超えるようなジャギの名残もある。大半のHV1280アニメも元の絵は1280x720より大きくそれを縮小していると考えられるので、この特徴からもしHVマスタが存在するならHV1280+とはいえないけれど。

関連して、このアニメは部分的に60iで動く部分があり、仮にHVをSD化したとするとその処理はフィールド単位での縮小となるので、レタボアニメでのよれよれ同様、何らかの劣化が出そうだけど、それらしい特徴は確認できない。ということで実験してみたところ、縦720からフィールド単位で縮小するとフィールド単位での処理の劣化が目立つものの、縦1080からの縮小であれば、多少ボケている状態という条件はつくものの、このアニメの放送画質に近い状態は十分実現できる。ということで、元がHVということを否定するようなところもなさそう。

ここまで前置き。

このアニメのOPやEDは部分的にぶれた感じがするのが見ていてもわかる。一部でポケモンチェックという単語で表現される映像加工の1種、と勝手に理解しているけれど、この「ポケモンチェック」という単語の語源も定義も不明確で、そもそも例の事件の原因とされる点滅に対してはあまり効果がなさそうな処理だけれど、まあ理由や名称はともかく、どういう処理が起こっているのか確認してみよう。この「処理」はアナログ時代からあるらしいし、すでに十分知られているものかもしれないけれど。

かなり複雑に見えるけれど実際の処理はいたって単純。元は24fpsの映像を2-3プルダウンした状態の60iの映像において、あるフィールドに対し、その直前のフィールドの絵をブレンドしているだけ。



言葉ではわかりにくいので、表にしてみよう。

このアニメは基本は24fpsで、それを60iにした状態が一番上の状態。上段がトップ, 下段がボトムで上下そろってフレームになる。Aのフレームは2フィールド、Bは3フィールド, Cは2, Dは3と2, 3, 2, 3を繰り返して60フィールドにしている。24p→60i化は別の方法もあるけれど割愛。

その60iの映像の各フィールドに対し直前のフィールド(topなら直前のtopフィールド、bottomなら直前のbottomフィールド)の絵とブレンド(2枚の絵を平均した状態)を作る。それが2番目の「2フレームブレンド」の状態。"1"の位置からその加工が始まり、各フィールドはその左にあるフィールドと合わせただけだけど、元が24fpsのため少し複雑な結果になっている。"1"の位置からの10フィールド=5フレーム分(1/6秒)を見ると

 AB-AB-BB-BC-BC-CD-CD-DD-DE-DE

になる。このうちBBとDDはブレンドするフィールドが同じ絵なのでブレがない状態だけれど、BBはトップフィールドしかなく、DDはボトムフィールドのみ。つまり、この2フィールドは前後のどのフィールドと合わせても縞(ここでは普通のコーミングの意味での縞)が出てしまう。

絵の違いに注目すると、1/6秒間に

 AB-BB-BC-CD-DD-DE

の6種類の絵が存在するので、1秒間では36枚の異なる絵になる。36fpsという表現も間違いではないものの不適切で、仮に1/36秒の時間ずつ表示させても元の周期とずれてしまい動きが滑らかにならない。
意図としては前の絵とブレンドしようとしてそれが出来なかったのがBBとDDの2フィールドなので、この2フィールドを捨てて
 AB-BC-CD-DE
の4フレームを24fpsで再生するのが無難だろう。
OP53秒あたりから始まる処理をフィールドで確認するとわかりやすい。

一方ED45秒当たりから牌が跳ねる部分はブレンドされるフィールドが2から3に増え、直前ともう一つ前のフィールドの3フィールドの平均の絵に状態なので、さらに複雑な状態に見えるのが一番下。その結果1/6秒間の10フィールドは

 ABB-ABC-BBC-BCD-BCD-CDD-CDE-DDE-DEF-DEF

となり、2フィールドの組み合わせで縞のないフレームが作れるのはBCDとDEFだけになってしまう。これも絵の違いで分けると

 ABB-ABC-BBC-BCD-CDD-CDE-DDE-DEF

の8枚になり1秒間では48枚だけど、同様に48fpsというのは不適切だろう。

この3フィールドを合わせた状態になると、妥協しないと縞なしの絵にならない。処理の意図を考えると

 ABC-BCD-CDE-DEF

の4フレームを24fpsで表示することが無難ではあるけれど、ABCはボトム、CDEはトップしか存在しない。結局この状態のip変換では、片方のフィールドだけを拡大するか、絵が異なるフィールドとあわせてぼかすか、縞のままにするかで妥協することになる。

上の説明と合わせるため、この表で処理の開始位置が"2"からになっているけれど、ED45秒あたりからの実際の処理では"3"の位置から始まっている。

3ブレンド状態では、上の表で見ると"0"の位置のA、"1"の位置の B のフレームの後に、 ABB-ABCが来ているので、
時間的に前のAの絵の情報がBより後にも出てきてしまい、絵が前に戻ったように見えてしまう。実際EDでもこの前戻り現象が起こっている。

ブレンド自体はフィールド単位で行なわれるように説明したものの、処理としてはフレームでも等価。フィールドブレンドと書くとトップとボトムのブレンドと思えてしまうので、表では意図してフレームブレンドとしています。

咲のOP,EDは、上記位置以外でもブレンドがあり、さらに60fpsで動くところとか、周期違いや片フィールドしかない部分とか、悩ましい問題が多い上に、SD-ipでアプコン縞も大量ということで、教材(って何の?)としては都合がよさそう。